頬紅太郎
【物語】
~これまでのあらすじ~
寛永の初めの頃、薩摩(鹿児島県)の吉田のあたりでならず者どもが集まって話し合いをしていた。その内容は、 源頼光は酒呑童子を切ったというし金平(坂田金時の子供)は天狗の尾を引き抜いたというが証拠はなく実際に起きたことだとは思えない。 まあこれらも我々ならず者にとっては恐れるに足らぬことなのだが、しかし、不思議なことが存在しないとはいえない。 近頃は狐に化かされて頭を坊主にされる人がたくさんいるらしい。ということだった。
ここで兵六という男が
「狐に化かされるなんていう不思議話はどうせいいかげんな奴が見間違えたのだ。 この兵六が真偽を確かめてこよう。不思議なことがあれば見届けて証拠を持ってきてみせる。 不思議なことが無ければ飯をおごって貰おう」
と言い、確かめに行くことになった。
実際のところ、この付近には名のある狐が六匹集まって悪さをしていた。狐たちは今夜兵六が来ることを知り、いろいろと化ける策を練ることにした。
始めに狐が妖怪「宇蛇」に化けて脅かすと兵六は早速肝を潰して走っていってしまった。その後も兵六は狐が化けるたびに脅かされ、 今、兵六は狐が化けたぬらりひょんから泣きわめきながら逃げ出したところだった。
~あらすじここまで~
俄かに空の色が変わり、風が吹き小雨が激しく降り注いだ。そのとき、先の見えない崖の上から大声が周囲の山や谷に響いた。
「頬紅太郎とは我のことだ。音に聞く兵六、相撲なり腕押しなり、心次第に一勝負」
兵六が見上げる頭の上から、色は黒く、髪を振り乱し唇は赤く目は光り、手足は熊のような妖怪が鋭い爪を盛んに振って襲い掛かってきた。 兵六はここでも気が動転して息を切らして逃げ出してしまった。
【補足】
なし
【掲載資料】
- 『大石兵六物語』
【参考資料】
- [主]国立歴史民俗博物館 WEBギャラリー 大石兵六物語絵巻4(外部リンク)
- [副]『『大石兵六物語絵巻』のすべて』伊牟田經久(著)/南方新社/2007年
【コメント】
オーバーキルされたかに見えた兵六でしたが最後には狐を二匹捕まえることに成功し、証拠として持ち帰ったことで皆にもてはやされます。あんなに脅かされてたのに。
【履歴】
2018年11月25日:Twitterでの紹介
2019年4月17日:N鬼夜行での紹介
【解説】
化粧をしたように顔が赤くなっているのが特徴的な、熊のような妖怪。