耳うどての妖怪

耳うどての妖怪

【解説】

 天気を操ることができる妖怪。黒雲に乗って空を飛ぶ。

【物語】

 嘉永八年(1855年?)の三月中旬から四月下旬にかけては雲一つない日が続いたので少しも雨が降らず、百姓たちは旱魃で大変苦しんでいた。

 去御寺に生如来御法印と呼ばれる博学多才の上人がいた。昼夜を問わず人々が水不足で苦しんでいるのを見るに忍びず、 「我はいやしくも一寺の住職。生如来とも言われる身。今こそ日頃の修行で得た法力で雨を呼び、民を助けよう」 と考えて耳うどてと呼ばれる有名な魔所に行き、七日七夜「シャシャモシャモシャ」とありがたいお祈りをした。

 満願の日、それまでは針の先ほどの雲もなかったのに、申いさり(不明)の頂から黒雲が起こり、そのままこちらに飛んできた。 黒雲の中には右の絵のような妖怪がいて、淵に飛び込み水を浴びると夕立がひとしきりサッと降った。 しかし妖怪の口から虹が吹き出すと見る見る元の晴天に戻ってしまった。

【補足】

 どれだけ徳を積んだ大和尚でも天変地異はどうしようもないのだという教訓である。

 嘉永は江戸時代の元号だが七年で安政に改元した。

【掲載資料】

  • 『絵本集艸』

【参考資料】

  • [主]『あの世・妖怪・陰陽師 ─異界万華鏡・高知編─ ─展示解説資料集─』図録 高知県立歴史民俗博物館(編)/高知県立歴史民俗博物館/2003年

【コメント】

 自然の厳しさと気まぐれが形を持った、神秘的な妖怪です。

 弘法大師なら天気くらい簡単に変えられそう。

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【履歴】

2018年7月17日:Twitterでの紹介

2019年4月17日:N鬼夜行での紹介