ししこり
【物語】
豊前国の奈良林という村の百姓たちの間では、飼っている牛や馬が一匹残らずいなくなっているという事件が起こっていた。 しかし藤助という者は毎晩一人で厩の番をしていたので牛馬を失うことは無かった。
ある夜しきりに生臭いにおいがして、この妖怪が厩に入ってきて牛を一呑みにしてしまった。藤助は驚いて逃げ出し、庄屋にこのことを語ると、 その近辺の深山で山狩りを行うことになった。
ある岩穴の中で生臭いにおいを頼りに岩を起こしてみるとこの妖怪がいた。竹槍で突いて仕留めたこの妖怪の高さは六尺(約1.8m)、八畳敷きとも思われた口の広さは 一丈と一尺(約3.3m)だったという。老人が語るには、この妖怪は「ししこり」というものであるらしい。
【補足】
姿は「おとろし[1]」などと呼ばれる妖怪に酷似しているが前髪が無いことなどの相違点がある。
豊前国奈良林村の位置は不明だが、現大分県豊後高田市酒井には 楢林 という地域が存在する。ここは過去に豊前国の領地であったことがあるため、奈良林村はこの地域である可能性がある[2]。
【掲載資料】
- 『化物づくし絵巻』
【参考資料】
- [主]『図説|妖怪画の系譜』兵庫県立歴史博物館,京都国際マンガミュージアム(編)/河出書房新社/2009年
- [1]おとろし - Wikipedia(外部リンク)
- [2]『豊妖新報 第三号』豊妖組合(編)/豊妖組合/2017年
【コメント】
おとろしではなく断固としてししこりなのです。
おとろしには多くの亜種がいますが、絵に加えて伝承があるものはこの妖怪の他には見つかっていません。
【履歴】
2017年10月21日:Twitterでの紹介
2019年4月17日:N鬼夜行での紹介
【解説】
牛や馬を食べてしまう大きな妖怪。生臭いにおいがする。