テツケン

テツケン

【解説】

 眠っている人間の舌を抜いて食べる妖怪。

【物語】

 昔三人の男が釜小屋で仕事をしていたが、夜になってしまったのでそのまま小屋に泊まることにした。そのうち二人は眠ってしまったが、一人はなかなか眠れなかった。 すると、テツケンという化物が入ってきて眠っている二人の舌を抜いて食べているのが見えた。

 一人だけ起きていた男は自分も舌を抜かれることを恐れて小屋を逃げ出したが、逃げる途中につまづいて熊のすみかである洞穴に転がり落ちてしまった。 熊は男を洞穴の奥の方に放り込んで外に出ようとした。しかしそこにテツケンが来てすさまじい争いとなった。

 夜が明けて、男が外に出てみると、熊もテツケンも戦いの末に死んでいた。男は熊に命を救われたと思って熊をねんごろに葬った。

 

 そのためこの地域のマタギたちは自分のとらえた熊の骨は必ず葬っているという。

【補足】

 百物語をしたら化物が来て舌を抜かれる型の昔話の一種であり、ほぼ同一の話が熊野山神社の由来としても語られている[1]。 この場合に襲ってくるのは名称のない化物やヒヒなどであり、テツケンという名称は一般的ではない。

 熊がすぐに男を襲わないのは、熊は巣穴の中では人を襲わない[2]と考えられていたためだと思われる。

【掲載資料】

  • 『調査報告(第五号) 東由利の民俗 ──秋田県由利郡東由利村──』

【参考資料】

  • [主]『調査報告(第五号) 東由利の民俗 ──秋田県由利郡東由利村──』坂泰子,西岡佐織,乾充起子,高杉恵子(編)/大谷女子大学民俗研究会/1974年
  • [1]『傳承文藝 第十七號 ──秋田県平鹿郡山内村昔話集──』秋田県平鹿郡山内村昔話集編集委員会(編)/民俗文学研究會/1990年
  • [2]『秋田マタギ聞書 常民文化叢書<4>』武藤鉄城(著)/慶友社/1969年

【コメント】

 熊と同等の強さを持ったフィジカル系妖怪です。名前の意味が不明なのですが、響きはかっこいいです。

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【履歴】

2019年8月25日:Twitterでの紹介

2019年8月25日:N鬼夜行での紹介