柿の木の怪蟲
【物語】
ある年の初冬、浅布領の今里集落桑原坂の豆腐屋の女が家に帰ると柿の木に異様な虫がついているのを見つけた。
その虫は木の幹にへばりついていた。体は白く、蝸牛よりも大きな頭の先には環形の口があり歯が縦に並んでいた。 目は二つあり、額には一本の黒いすじが入っていた。七、八寸ある尾はこよりのようで、まるで矛の先のようにスイーっと動いた。 試しに指を口の中に入れるとたちまち噛みつき放さず、怖くなって木の幹に擦り付けると取れた。
そのうち子供達が集まってきてこの虫を殺してしまった。頭は次第に動かなくなったが尾はそのまま動き続けた。
当時この地域の老人が虫の名前を知っていたが、今はもう忘れられてしまった。
【補足】
元の項目名は「怪蟲」。
【掲載資料】
- 『日東本草図纂』九
【参考資料】
【コメント】
この虫の目がすごく好きです。
【履歴】
2018年7月22日:Twitterでの紹介
2019年4月17日:N鬼夜行での紹介
【解説】
柿の木についている奇妙な虫。口の中に指を入れると噛まれる。