煙蛇
【物語】
暑い夏の日、家の台所に真っ黒な煙が渦を巻いている。火事で煙が充満しているのではなく、煙が蛇のように一本の長い塊になっているのである。
煙の先には白髪交じりのおじさんの顔がついており、その顔はまるで蛇が鎌首をもたげるように天井のあたりでキョロキョロとあたりを見回している。
この顔と目が合い驚いて「うわっ!」と声を上げるとおじさんの顔もびっくりしたと見えて、 煙の胴体をくねらせながら移動し、台所の止まっている換気扇から出て行った。
【補足】
類話として、紫色の煙が家の床にたまっていて、それを見てびっくりしたとたんに立ち上り、動いていない換気扇から出ていく「むらさきのけむり[1]」という怪異も存在する。
【掲載資料】
- 『現代百物語 新耳袋 第三夜』第八十七話
【参考資料】
- [主]『現代百物語 新耳袋 第三夜』木原浩勝,中山市朗(著)/メディアファクトリー/1998年
- [1]『怪異百物語 10 ─まだまだあるこわい場所─』不思議な世界を考える会(編)/ポプラ社/2007年
【コメント】
顔部分が「白髪交じりのおじさん」なところにリアルさを感じます。
【履歴】
2018年7月23日:Twitterでの紹介
2019年4月17日:N鬼夜行での紹介
【解説】
黒い煙の胴体と白髪交じりのおじさんの顔を持った蛇のような妖怪。大阪の天王寺に出る。