苦桃太郎
【物語】
桃太郎に鬼たちが敗れた後の鬼ヶ島では、桃太郎への恨みを晴らすために 時の王鬼が「日本を征伐し、桃太郎の首と取られた宝を持ち帰ったものを次の王とする」というおふれを出した。 しかし皆が桃太郎の手並みを知り、また恐れていたので、名乗り出る鬼はいなかった。
ここに鬼の夫婦がいた。もとは鬼ヶ島の城門の衛司であったが桃太郎にあえなく鉄扉を 打ち砕かれてしまったため、その罰として職を失い今は漁業をしていた。この妻は 「桃太郎は桃から生まれたのだから、並の鬼の腹から生まれた鬼では相手にならない」 と思い、夜叉神に桃太郎の二倍の武勇を誇る子が欲しいと祈った。祈り続けて二十一日経った夜に霊夢を受け、 その明け方に阿修羅河に行くとたいそう大きな苦桃が一つふわふわと流れて来た。
喜んで苦桃を持ち帰りこれを割ると、その種がたちまち一丈五尺(約4.5m)の青鬼となった。 紅皿のような口を開いて火焔を吐いて立つその姿は鬼の目にも恐ろしく見えた。この鬼は苦桃から生まれたので苦桃太郎と名乗ることになった。
そして苦桃太郎は夫婦から人間のしゃれこうべをきび団子のように持たされ「金色の毒竜王」、「白毛赤面の大狒々」、「牛ほどの大きさの狼」をお供にして桃太郎退治に向かうことになる……。
続きは本編で!
【補足】
なし
【掲載資料】
- 『鬼桃太郎』
【参考資料】
- [主]『名著復刻日本児童文学館 第一集 鬼桃太郎』ほるぷ出版/1974年
- [主]青空文庫 尾崎紅葉 鬼桃太郎(外部リンク)
- [主]『文豪妖怪名作選』東雅夫(編)/東京創元社/2017年
【コメント】
あの尾崎紅葉による、桃太郎の後日談です。果たして桃太郎と苦桃太郎どちらが勝つのか!
【履歴】
2017年10月29日:Twitterでの紹介
2019年4月17日:N鬼夜行での紹介
【解説】
鬼ヶ島に流れてきた苦桃から生まれた大きな青鬼。他の鬼とも比べ物にならないほど力が強く、無礼傲慢な性格をしている。