腕真砂
【補足】
物理学者の寺田寅彦が中学時代に友人である 禿 のNから聞いた妖怪。彼は近所のあらゆる場所に妖怪を創造する能力に秀でた人物だったという。
【掲載資料】
- 『化物の進化』吉村冬彦(寺田寅彦)
【参考資料】
- [主]『改造』新年號/1929年
- [副]『怪異考/化物の進化 ──寺田寅彦随筆選集』寺田寅彦(著),千葉俊二,細川光洋(編)/中央公論新社/2012年
【コメント】
足をつかんでくるだけかと思いきや、何故か出会っただけで死ぬかもしれない恐怖の妖怪です。
禿のNは多くの魅力的な妖怪を生み出していたようですが、現代の我々は寺田寅彦が随筆に書いてくれた分の妖怪しか知ることができません。 誰かを怖がらせたり楽しませたりしたけれども今はどこにも残っていない、消えてしまった妖怪に思いを馳せるとなんだか寂しい気持ちになります。
【履歴】
2020年10月18日:Twitterでの紹介
2021年10月14日:N鬼夜行での紹介
【解説】
真砂のように一面に散布している人の腕が通行人の裾を引き留め、足をつかんで歩かせないという妖怪。城山の麓のT橋の袂に出る。これに会うと大抵はその場で死んでしまう。